よくあるQ&A

Q1. 英語は聞いているだけで発音できるようになりますか。

A   日本人が英語を聞く時は、日本語というフィルターを通して、英語の音が耳に届いています。日本語にない英語の音を聞いた時には、その音を日本語にある音に置き換えて聞いているのです。たとえば、日本語にない英語のLとRの音を、日本人が聞いた時には、日本語のラ行の音に置き換えて聞いているといえます。母親が子供に話しかける言葉の中に、英語ではLとRの音、日本語ではラ行の音が多く入っています。英語のLとRの音と日本語のラ行の音は全く違う音であることがわかっています。母親の言葉を子供は聞き取ろうとして、英語圏の児童は英語のLとRの音をどんどん聞き取り、日本人児童は日本語のラ行をどんどん聞き取ります。日本人が日本語を理解できるようになるために、日本語の音の理解の準備に入ることは重要なことです。その結果、日本人乳児は生後8-10か月で英語のLとRの音が聞き取れなくなっていきます。日本人が、日本語という音を通して英語を聞いているとすれば、日本語にない音は、発音の仕方をきちんと学ぶことでしか明確に発音できるようにはなりません。 したがって、英語の発音の仕方を学ぶことは非常に重要です。

Q2. 英語のつづりが難しいのはなぜでしょうか。

A 世界には3,000~8,000語の言語があるといわれています。その中で英語は最もつづりが不規則な言語の一つといえます。ヨーロッパ言語の中には1年以下で読み書きが習得できる言語もありますが、英語は、英語圏の児童でも読み書きができるようになるまでに3年かかるといわれています。例えばフィンランド語は、音と文字は1対1対応で規則的なので、数か月で読み書きができるようになります。一方、英語の音と文字は1対1対応ではなく、同じ文字や同じ綴りが違う音になったり、単語の中に発音しない文字があったりと非常に不規則です。英語の「文字」には、様々な別の言語を取り込んできた歴史があります。もともとの別の言語のつづりをそのまま英語に取り入れているので、英語の文字と発音が一致しないことも多いのです。例えば、ギリシャ語が由来の単語psychology(心理学)にはギリシャ語で語頭にあった文字がそのまま英語に入ってきたので発音しないpが存在し、フランス語が由来の単語には、語頭のhを発音しないhonest, honor, hourなどがあります。 英語は多くの言語のハイブリッド(合成物)と言われ、非常に多文化的で柔軟性がある言語です。

Q3. フォニックスは何ですか。

A  フォニックスとは英語の「音」とそれに対応する「文字」の関係を学ぶ指導法のことです。英語のアルファベットには、それぞれ別の「名前」と「音」あります。英語のアルファベットの「名前」はa, b, c, dをエィ、ビー、シー、ディーと呼ぶ方法のことで、アルファベットの「音」とは、a, b, c, d をア、ブッ、クッ、ドゥと呼ぶ音のことで、「音」にどのような「文字」が対応しているのかという規則を学ぶことがフォニックスです。例えばpetを「ピー、イー、ティー」と読むのがアルファベットの「名前」で、petを「プッ、エッ、トゥ」と読むのがアルファベットの「音」です。(便宜上ここではカタカナで説明します)
(例) p   e   t
        ピー、イー、ティー(アルファベットの名前)
      プッ、エッ、トゥ (アルファベットの音)
アルファベットの音を組み合わせるとpetの発音になります。アルファベットにはそれぞれ別の音があって、音と文字の規則がわかると、英単語を聞いた時にその音を表す文字を書き、英単語を初めて見た時に自分で読めるようになります。

Q4. フォニックスを学習したら英語はできるようになりますか。

A フォニックスだけでは足りません。フォニックスとは、英語を聞いてわかり話すことができる英語圏の児童が、英語の「音」と「文字」のルールを学習することによって、自分で読み書きできるようになるための学習方法です。日本人の児童が、英語の音を知らずにフォニックスのルールだけを覚えることは辛い学習法になってしまいます。日本語と英語の音は大きく違うので、英語の音を聞くことはとても重要です。しかも、英語はつづりが世界で一番不規則な言語の一つですから、フォニックスのルールですべての英語が読めるわけではありません。フォニックスで読める英語は全体の70%程度です。フォニックスのルールを学習しながら、同時に英語の音声をたくさん聞きましょう。英語の発音は筋肉のようなものです。鍛えたら発音できるようになり、聞き取れるようにもなります。鍛えることをやめたら、当然、動かなくなります。英語を英語らしく発音したいという気持ちで、一生かけて楽しく学んでいきましょう。

著書「子どもとはじめる英語発音とフォニックス」2017(南雲堂)より
<この著書について>
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